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Miyajima News

2020年9月1日

パティ・シェ・ド・ミッシェル

【令和2年(2020年)9月のコラム(第237号)】 


これは何の花かわかりますか?
正解は「オクラ」の花です。わが家の小さな畑に植えたオクラが毎日何本も
採れてしかもとても美味しく、日々の楽しみになっています(笑)

1.パティ・シェ・ド・ミッシェル

誰もが予想できなかった異常事態となった今年も、早いもので残り4か月となった。
年初に立てた今年の弊社のスローガンは「相手の喜びを追求する」である。
果たして今までの8か月間、どれくらいできているだろうか?

そんなことを考えていると、学生時代のある思い出が鮮明に浮かび上がった。
それは今は亡きN先輩の思い出である。

Nさんとは阪急六甲駅の少し山手にあった「きゃらぼく」という喫茶店のバイトで知り合った。
私がまだ18歳の一回生でそこのアルバイトを始めた時、Nさんは四回生だった。
当時はアイビーという服装が流行っていて、お洒落なKN大学のNさんは、
いつも折り目がきちっとついたスラックスかチノパンをはき、
ボタンダウンシャツにスイングトップという服装で実にカッコよかった。
でも出身が愛媛県の宇和島のまだ南のど田舎(失礼!)ということもあって、
どこかに親しみやすさを漂わせていて、歳の差はあったがなぜかとても親しくなった。

ある時、Nさんが「宮嶋、ディスコって行ったことある?」というので、大阪ミナミの
なんとかというディスコに連れて行ってもらったことがある(もちろんワリカンである)。
そこで知り合ったのがNさんの大学と同系列であるKN女子大一回生の四人組であった。
ちなみにKN女子大はお嬢様学校で有名な憧れの大学である。
Nさんは四人の女の子を前に、月並みだが星座や血液型やスイーツの話でどんどん彼女らを
引き込み、隣で見ているだけの僕にも彼女らの目がキラキラと輝いていくのがよくわかった。
「さすがNさん、すごいなぁ!モテモテとはこういうのをゆうんやなあ・・・・。」と感心するばかり。
そして帰る時にこう言った。
「今度さぁ、芦屋にとっても美味しいケーキ屋さんがあるから連れて行ってあげようか?」
女の子たちが「キャーッ!」と歓声を上げたのは言うまでもない。

当時私は大学一年生にもかかわらず、中古ではあるが父に車を買ってもらっていた。
なんと「茶色」の三菱ギャランラムダという2ドアクーペの車である。
かくして私は「運転手」としてNさんと四人の女子大生のデートに参加することになった。
5人乗りの、しかも2ドアの車に6人どうやって乗ったのかはよく覚えていないが、
行き先は神戸の東隣、芦屋川沿いにある「パティ・シェ・ド・ミッシェル」という、
名前からしてすごくお洒落なケーキ屋さんであった。
お店に入るなり、女の子たちは大喜びである。
そこでそれぞれに美味しいケーキとお茶を楽しみ、一息ついたころ、急にお店の照明が暗くなった。
みんながどうしたのかな?と不安になっているところに、白いシェフ帽を被ったケーキ職人さんが
シルバーの蓋をされたお皿が載ったカートを曳いて僕たちのテーブルの前で止まられたのだ。
そして蓋を取ると中にあった白いふわふわしたケーキらしきものにブランデーをかけ、
ライターで火をつけられると、暗くなった店内に青白い炎がふわーっと舞い上がったのである。
ご存知の方もおられると思うが、これが「ベイクド・アラスカ」という有名なスイーツであった。
初めてみるファンタジーに四人の女の子はもちろん、僕までもが大感激してしまった。
女の子の中には涙ぐんでいる子までいた。
もう全員、Nさんにノックダウンである。


ネットから探したベイクド・アラスカ(Baked Araska)の写真
(※パティ・シェ・ド・ミッシェルは残念ながら現在はありません)


つい長くなってしまったが、人を喜ばせる、感激させるということは、こういうことなのかと
教わった瞬間であった。もちろんその日のお勘定はNさんと僕の二人でワリカンである。
そういう素晴らしい師匠に出会ったにもかかわらず、いまだに私は人を喜ばせるのがへたくそである。

NさんはKN大学をご卒業後、地元愛媛の銀行にお勤めになったが、信じられないことに
半年後に白血病に侵され、一年余りの闘病ののち帰らぬ人となった。
今でもNさんのソフトで爽やかな語り口と笑顔は忘れられないが、今一度あの日芦屋川で
教わったことを思い出し、少しでもまわりの人を喜ばせてあげられるよう心がけたい。


愛犬チャイが8月8日(土)に亡くなりました。
すごくかわいくて優しい女の子でした。
長女がこのぬいぐるみがチャイにそっくりなので
家用と自分のアパート用に2つ買って!とのこと。
ディズニー映画「リメンバー・ミー」に出てくる犬ダンテ
(メキシカン・ヘアレス・ドッグ)のものですが、結構高かった・・・。
チャイ長い間ありがとう。

└誠一郎のコラム