【H21年9月のコラム(その2)(第97号)】
1.知的バックグラウンド
PHPの10月号を読んでいたら、巻頭エッセイの「生きる」という連載に、
高岡俊英さんという、43歳の男性の文章が載っていた。
そこには、その方が浪人時代に通っていた予備校の、ある女性講師の言葉が
思い出として語られていた。
一年間の勉強を終え、いよいよ受験を控えた最後の授業の時、その先生は
こう言われたそうである。
「今日が最後の授業です。予備校講師の私がこんなことを言うのもなんですが、
志望校に受かろうが受かるまいが、実は大したことではないのです。
私が皆さんに願うことはただ一つ、インテリであってほしい、知的な人間で
あってほしいということです。そのためには、一生本を読むことを忘れないこと。
どんな本でもいい。いつも一冊の本を身につけているという感触を
なくさないでください.。」
僕はこういうことを言う先生、本当に素敵だと思う。
この話を読んで、ほぼ同じようなことを聞いたことを思い出した。
私の高校は彦根東高校といって、国宝彦根城のお濠の中という最高の環境にある
高校で、江戸時代の井伊家彦根藩の藩校「稽古館」が発祥だそうである。
そういう校風のせいか、なにやらやたらと癖のある先生が多かったように思う。
その一人に政治経済担任の藤野という先生がいて、その先生が何かの時にぽろっと
言われた言葉を、僕はなぜか今でも鮮明に覚えている。
藤野先生は「成績がよければいい大学にいける。その後いい会社にも入れる。
しかし本当に大事なのは、受験のための学力ではなく、“知的バックグラウンド”
です。たとえば歴史なら、なになにが西暦何年に起こったとか、そういう知識だけでは
なく、それがどういう背景、経緯で、しかも国際的にどういう状況の中で起こったか、
そういうことが大事なのです」と言われたのである。
「知的バックグラウンド」
それ以来、なぜかその言葉は僕の頭の中にいつもあり、浅はかな知識でなんとか
日々をやり過ごしている自分を戒めてくれている。
« 1.お金にならない仕事 | INDEX | 1.評価の『積み重ね』 »