ミヤジマ社長 宮嶋誠一郎のコラム

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1.『 老 猿 』 と 『 手 』

【H28年(2016年)1月のコラム(第181号)】


  高村光雲作 『老猿』 / 東京国立博物館の絵葉書

1.『 老 猿 』 と 『 手 』

僕は過去に一度だけ、彫刻を見て鳥肌が立ったことがある。
それが上の写真、高村光雲の『老猿』(明治26年作)である。

何年前だったか忘れてしまったが、上野でたまたま時間ができて国立博物館を訪れ、
そこで出会ったのがこの作品だった。高さ1メートル余りあるこの像は、大鷲と格闘した
直後の老猿の姿を描いたものだそうだが、表現しようのない「ど迫力」、遠く上方を
睨んでいる目、握りしめた拳、身体を覆う毛の一本一本まですべてにエネルギーが
漲っているようだった。

今年は申年。

12月に東京へ出張した際、ふとそのことを思い出してこの彫刻が見たくなり、
上野に足を運んでみたのだが、残念ながら『老猿』の展示は無かった。係の人に
尋ねてみたが、当分展示の予定はないという。これほどの国の宝、せっかくの申年
なのだから展示すればよいのに・・・と思うのは僕だけだろうか。
次回展示の際はぜひまた見に行きたいと思う。

ところで、高村光雲の長男は「智恵子抄」などを書いた詩人、高村光太郎である。
光太郎は同時に彫刻家でもある。さすが光雲の血を継いでいるわけだが、
偉大な父や先代をもった息子、後継者というものは実にやりにくいものだ。

光太郎は父が教授を務める東京美術学校(今の東京芸術大学)に入ったものの、
ロダンの「考える人」に衝撃を受け、その後欧米に留学して近代的な西洋美術を学ぶ。
しかし父である光雲にはなかなか認めてもらえず、光太郎自身も「父は芸術家というより
仏師であり、前近代的な木彫り職人である」という辛口の表現を著作に残している。

そんな親子関係だった父も、光太郎36歳の時の作品である『手』を見て、初めて褒めた
という。この作品は、「仏像の手」がもとになっているそうだ。
やはり「血」は争えないものだと思った。

そんな父への思いを表したものかどうかはわからないが、
光太郎の代表的な詩である『道程』を紹介させていただき、
「今年も新たな道を拓く」という決意を込め、新年を迎えたいと思う。

本年もよろしくお願い申し上げます。皆さんのご多幸をお祈りいたします。


 『道程』 / 高村光太郎

僕の前に道はない
僕の後ろに道は出来る

ああ、自然よ
父よ
僕を一人立ちさせた広大な父よ
僕から目を離さないで守る事をせよ
常に父の気魄(きはく)を僕に充たせよ

この遠い道程のため
この遠い道程のため


  高村光太郎作 『 手 』


≪謹賀新年≫
 
「笑う門には福来る」 「災いは、いつかサル」 今年も笑顔でいきましょう!

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