ミヤジマ社長 宮嶋誠一郎のコラム

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人の心を引っ張るものは何か

【2007年2月のコラム(第65号)】

硫黄島からの手紙1


1.人の心を引っ張るものは何か

昨年10月から、「社長塾」というものを月に1回やっている。
大層な名前だが、「誠一郎塾」とか「幹部塾」とかどうもピンとこないため、語呂もいいので「社長塾」とし、終業後に1〜2時間程度、私の考えていることや好きな文章を一緒に読んでどう思うかというようなことを、役職者と一緒に話すのである。(本人達にはえらい迷惑かもしれないけれど・・・?)

先月はその4回めで、いつも私が経営の勉強をさせて頂いている京セラ創業者の稲盛和夫さんの本を読んでみたところ、メンバーの一人がこんなことを言った。

「社長が言う稲盛さんの話はよくわかるし、素晴らしいと思う。だけど、自分にはそんな立派なことよりもっと知りたいことがある。それは、京セラが今みたいに超大企業ではなく、創業したばかりの頃、先がどうなるかわからないのにも拘らずなぜ社員さんが窯の火を消さないように徹夜をしたりして必死に稲盛さんに付いていったのか?・・・そこのところが知りたいんや

まさに経営というか、人心掌握の中核となる、大変重要な質問である。
これに対して私は正直少々焦ったが、絶対に往なしてはならないと思い、「それはやはり強烈な思いやリーダーシップがあったからではないか?」とか答えたのだが、自分ながらイマイチだと思ったし、訊いた本人もピンと来ない顔をしていた。

ところが、「では、どんな人になら必死に付いて行こうと思うか?」という切り口で雑談をしていたら、「自分がどん底に落ちた時に、正味助けてもらった人には付いていくんじゃないかなあ」という声が出た。
その途端、なぜか私も皆も妙に納得。
そや、やっぱりトップには、どんなことがあっても、俺はお前たちを命懸けで守るぞ、という心意気がないとあかんし、それがあれば『この人に付いて行こう』って思うな」という結論に達したわけである。

では、果たして自分にそこまでの思いやりがあるか・・・。

実は私には苦い経験がある。もう10年以上前になるかと思うけれど、ある社員さんが仕事中に足を踏み外してケガをされ、長期間会社を休まれた。
それに対し、私は本人にどれだけのことをしてやれたか?実は私は労務士の先生などに相談し、法律上定められた必要最低限の補償しかしてあげられなかったのである。
私の心の中には「仕事中とはいえ、本人の不注意もあるのだから」という冷めた思いもあったのだろう。結局その社員さんは、復帰後、何年かして当社を辞めてしまわれたのである。あの怪我の時のことが直接の原因ではなかったと思うのだが、私にはあの時に通り一遍の対応しかしてくれなかった会社(私)に対して、失望されたことも理由の一つであったのではないかと、今では非常に反省している。
(そのため、今では万一の時のための上乗せの保険にも種々加入している。
しかしそれも大事だが、もっと大事なのは社員に対する心の底からの愛情だろう。)

6434名もの尊い命を奪った阪神大震災から先月で丸12年が経ったが、あの時、家族を放って真っ先に自分だけ家から逃げ出してしまったお父さんに不信感が募り、離婚に至ったという、笑いごとでは済まされないご夫婦の記事も読んだ覚えがある。

やはりトップには「命を懸けてでも下を守る」という思いが大事なのだと、改めて思った次第である。

余談ではあるが、たまたま最近観た2本の映画でも、同じようなことを考えさせられた。
硫黄島からの手紙」と「海猿」である。
前者は敗戦間際の絶体絶命の戦況の下、「予は常に諸子の先頭に在り」と率先して戦いに挑んだ渡辺謙さん演じる栗林忠道中将の姿に感動し、後者はまさか沈まないと誰もが油断した大型フェリー船から、自分の命を懸け、最後まで諦めずに乗客と同僚を助けた伊藤英明さん演じる潜水救助員仙崎の姿に僕はしびれた。

できることなら絶体絶命の状況には遭遇したくはない。
しかし万一そうなっても、自分は命を懸けて社員を守るべし。
改めてそう考えさせられた「社長塾」でした。

※「社長塾」とは、社長が「教える」塾ではなく、社長が「教えてもらう」塾だと悟れり

硫黄島からの手紙2 海猿
戦況を見守る栗林忠道中将   炎の中に立つ潜水救助隊員 仙崎


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